2019.10.20
くもり晴れ。
私は何かにつけて罵られてここまで生きてきた。
それは私のありとあらゆる全てを、だ。
罵られた最初の記憶は幼少期で、相手は母親の弟だ。
私の足首をむんずと掴むとこう言った。
「子供のくせに足首太っ」
状況こそ覚えてないし何歳だったかも覚えてないのに、この時の顔も声も鮮明に覚えている。
その後はもう罵られ人生だ。
道をただ歩いているだけなのに知らない人に
「顔デカブス!」
と叫ばれたことがある。
知らない人が言うくらいなので相当なんだと思うし申し訳ないと思っている。
会社で毎日毎日飽きもせず言ってくる人もいた。
顔を合わせればやれなんでそんなに髪が多いのやら、やれ頭デカイから帽子かぶれないとか。
これは途中から本当に飽きた。
もう解っておる。でも生まれるとこからやり直せねえとずっと思っていた。
そんな私は海外のトップモデルが大好きだ。
それは子供時代、年の離れたいとこが渡してきた1冊の雑誌。
Vogueだ。
見たこともない、読めない言語で書かれたその本こそ魔法の本だった。
ページをめくれば美しい見た事のない人が何やらすごい服を着て写真におさまっていた。
それがアーヴィング ペンの写真だったことに気が付いたのは随分あとの話。
※この写真は参考画像です。もちろんアーヴィング ペン撮影。モデルは泣く子も黙る、シンディー クロフォード
美しい女性の顔を見て私の顔を鏡で見ると、それはもう、同じ地球上で生きているとは思えない程の違いだった。
私は本当に馬鹿なのでその状態を、今は子供だからだ。大人になればこうなるんだ、と本気で思っていた。
毎日鏡の前で醜い自分の顔がそうなるんだと念を込め、目頭を開いてみたり口角を引っ張りあげたり頬を凹ませたりしてみた。
もちろんだが、醜い者は醜いままだった。
自分が死ぬまであとどれくらいあるのかわからないが、もうこの先ずっと醜いままなんだなあ、そんな事を思うのである。
君はとても美しいよ。